甲状腺機能管理

妊娠前・妊娠中の甲状腺機能管理

妊娠可能域女性のTSHの正常範囲

妊娠可能な女性のTSH正常範囲は、従来の正常範囲より、厳密に管理することが重要といわれています。
国際ガイドラインでは、TSHが2.5μIU/mL以上にならないよう妊娠前から調整しておくことが推奨されています。

現在日本人では、TSHが3.0μIU/mL以上にならないようにという基準でもいいのではないかということで検討されています。

妊娠初期TSH値と胎児損失率の関係

妊娠初期のTSHの値と胎児損失率の関係をみても、甲状腺の管理が重要であることがわかります。

妊娠後の甲状腺管理

出産後に甲状腺機能異常は一般出産後婦人の5.5%に出現するといわれています。

出産後甲状腺機能異常症

産後、肥立ちの悪いかたは、甲状腺機能異常がないか、検査することが大切です。

不妊女性における甲状腺検査と治療

不妊症における軽症甲状腺機能低下症と排卵障害

女性に多いといわれる甲状腺機能異常は、不妊症との関係も重要です。

不妊女性における甲状腺検査と治療

フローチャート項目一覧

項目コード 項目名称
0701 3 甲状腺刺激ホルモン (TSH) new window
0119 5 遊離サイロキシン (Free T4) new window
0628 1 遊離トリヨードサイロニン (Free T3) new window
0557 7 抗サイログロブリン抗体 new window
2319 6 抗甲状腺 ペルオキシダーゼ抗体 (抗TPO抗体) new window
0629 9 TSHレセプター抗体 new window

不妊女性の患者さんには、甲状腺検査も実施し、結果に基づいた治療を行うことが不妊治療にもつながります。

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妊娠時の甲状腺疾患管理の国際ガイドライン 2012年「妊娠時の甲状腺疾患管理の国際ガイドライン2012年改訂版」より抜粋

  1. 1. 甲状腺機能低下症と妊娠:母体と胎児の面から
    1. 1.1. 妊娠中のFT4の解釈には注意すべきである。各検査室は妊娠各期の基準値を作るべきである。 妊娠第2期、第3期の総T4基準範囲は非妊娠時の1.5倍を用いる。妊娠中はFT4indexが信頼できる (注)。
    2. 1.2.1. 母体の甲状腺機能低下症は胎児に重大な障害をもたらすので、母体甲状腺機能低下症は避けなければならない。
    3. 1.2.2. 潜在性甲状腺機能低下症 (TSH高値、FT4正常) は母体および子供に悪影響を及ぼすことがある。 T4治療は産科的な経過を改善するが、出生児の長期間にわたる神経学的な発達を修飾することは証明されていない。 しかしリスクより利益のほうが勝るので、潜在性甲状腺機能低下症の女性にはT4治療を推薦する
    4. 1.2.3. 妊娠前に甲状腺機能低下症が診断されている症例では、 TSH値が2.5μU/mL以上にならないように補充T4量を妊娠前から調整しておくことを推薦する。
    5. 1.2.4. T4補充量は妊娠4~6週までに、非妊娠時の30%またはそれ以上の増量が必要である。
    6. 1.2.5. 妊娠中に甲状腺機能低下症が診断された時は、出来るだけ早く甲状腺機能を正常化し、妊娠第1期にはTSH値を2.5μU/mL以下にするよう (または妊娠第2期および3期には3μU/mL) または妊娠各時期の基準TSH範囲になるようにT4で治療しなければならない。 甲状腺機能は30~40日以内に再検査するべきである。
    7. 1.2.7. 出産後は妊娠中増量していたT4は妊娠前の量に減量する。
    8. (注) 日本ではFT4indexは現在用いられていないので、FT4を利用する。 FT4は妊娠中期・後期にやや低値を示すので、TSHを同時測定しTSH値で甲状腺機能を判読する。

  2. 2. 母体甲状腺機能亢進症の管理:母体面から
    1. 2.1.1. 妊娠中TSHが低値の場合、バセドウ病か生理的に発生する妊娠甲状腺中毒症かを鑑別しなければならない。 バセドウ病甲状腺機能亢進症は自己免疫、甲状腺腫大、TSH受容体抗体 (TRAb) の存在で支持される。
    2. 2.1.2. バセドウ病や過機能性甲状腺結節による顕性甲状腺機能亢進は、 抗甲状腺剤でFT4が非妊娠時の正常上限あたりになるように治療する。
    3. 2.1.3. メチマゾール (MMI) は先天奇形を合併することがあるので、 PTUを第一選択として、特に器官形成期の妊娠第1期には使用する。 PTUが利用できないか、副作用がある時はMMIで治療する。MMI 10mgはPTU100~150mgに相当する。 PTUは稀だが重症肝障害を起こすことがあるので、第1期終了後はPTUをMMIに切り替えるよう推薦する。 薬剤変更は時に難しいこともあるので、どのような選択をするかは担当医が決めてもよい。 PTUからMMIに変更した時には、2週間後さらに2~4週間後に甲状腺機能を調べる。 肝障害は急激に発症するが、PTU使用時は肝機能検査のモニターは妥当である。
  3. 胎児面から
    1. 2.2.1. TRAb (TSH受容体刺激または結合抗体) は容易に胎盤を通過し胎児甲状腺を刺激する。 バセドウ病の現病歴の人、既往歴のある人、131Iまたは甲状腺摘出術をうけた母親、 または以前新生児バセドウ病の児を産んだ母親は、妊娠22週までにTRAbを測定すべきである。 TRAb陰性で抗甲状腺剤が必要でない女性は、胎児または新生児甲状腺機能異常を発生するリスクはほとんどない。
  4. 3. 妊娠悪阻と甲状腺中毒症
    1. 3.1. すべての妊娠悪阻患者 (5%体重減少、脱水とケトン症尿) は、甲状腺機能検査をするべきである。
    2. 3.2. 妊娠甲状腺中毒症のほとんどは抗甲状腺剤治療を必要としない。 β-遮断薬を産科医の同意を得て使用することもある。
    3. 3.3. 同時期にバセドウ病 (FT4が基準範囲以上か総T4が正常妊娠上限値の150%以上、 TSH0.1μU/mL以下およびTRAb陽性) が合併している例は抗甲状腺剤で治療すべきである。
  5. 4. 自己免疫性甲状腺疾患と流産
    1. 4.1. 甲状腺自己抗体と胎児損失とは関連があるが、現時点で普遍的な自己抗体のスクリーニングと治療を推薦しない。 抗甲状腺自己抗体陽性で甲状腺機能正常の女性にT4治療介入が流産を低下させるという報告が現在一つある。 TPO抗体陽性者は甲状腺機能低下症へと進展するリスクが高いので妊娠中のみならず、妊娠前からTSHのスクリーニング検査をするべきである。
  6. 7. 出産後甲状腺炎
    1. 7.1. 出産後甲状腺炎 (PPT) のために、全女性のスクリーニングを推薦すべきであるとの成績は十分揃っていない。
    2. 7.2. TPO抗体が陽性の女性では、TSH測定を産後3~12週および6ヶ月目に行うべきである。
    3. 7.3. I型糖尿病の女性はPPT出現の頻度が一般人口に比し3倍高い。 したがってTSH測定は産後3および6ヶ月にスクリーニングすることが推奨される。
    4. 7.4. PPT既往のある女性では5~10年後に永続性の原発性甲状腺機能低下症を発生するリスクが非常に高い。 したがってTSHは年1回検査するべきである。
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甲状腺関連サイト紹介

「妊娠と甲状腺」等甲状腺に関する資料のサイトを紹介いたします。

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■ 関連学会 ■
日本甲状腺学会 日本甲状腺外科学会 日本核医学技術学会
■ 関連企業 ■
あすか製薬株式会社

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