多彩な症状のTSAbって?

こんにちは、Club SRL 武内優子です。

甲状腺中毒症の早期発見と早期対応のポイントです。
「動悸」、「頻脈」、「手指のふるえ」、「息切れ」、「食欲があるのに体重が減少する」、 「汗が多い、暑がり」、「倦怠感」、「神経質で気分がイライラする」、「微熱がある」といった多彩な症状がある場合、 甲状腺中毒症をきたす主な疾患の鑑別診断フローチャートをご覧になってください。

血液中の甲状腺ホルモンが増加する病態を甲状腺中毒症 (英語名Thyrotoxicosis) といいます。
甲状腺中毒症は大きく「甲状腺機能亢進症 (Hyperthyroidism)」、 「破壊性甲状腺中毒症 (Destructive thyrotoxicosis)」 「詐病性 (作為的) 甲状腺中毒症・甲状腺剤甲状腺中毒症 (Factitious thyrotoxicosis)」に分けられ、 「バセドウ病 (Graves’disease)」は「甲状腺機能亢進症 (Hyperthyroidism)」の代表的な疾患です。

フローチャート 重篤副作用疾患別対応マニュアル甲状腺中毒症 (平成21年5月厚生労働省) より 一部改変

甲状腺中毒症をきたす主な疾患の鑑別診断で一般的に TSHレセプター抗体 (抗TSH受容体抗体) new window を使います。
バセドウ病診断時、TSHレセプター抗体 (抗TSH受容体抗体) の結果が陰性の場合の TSAb (TSH刺激性レセプター抗体) new window について紹介いたします。

唐突で失礼します・・・
私はブタ甲状腺細胞を使ってバイオアッセイがイマイチわかりませんでした・・・
バイオアッセイが最終的にイムノアッセイなんて・・・
ですが、ようやくわかりました!

7月から新法のTSAbでは、感度、精度も確実に高い検査になりました。
新法TSAbとTRAbを測定できればバセドウ病の大部分が診断できるのですが・・・

TSAbについて 監修 : 上條甲状腺クリニック・上條甲状腺研究所 院長 上條 桂一先生

測定原理について

測定原理

TSAb (甲状腺を刺激する抗体) に反応するネイティブな TSHR (甲状腺刺激ホルモンレセプター) の発現系であるブタ甲状腺のプライマリー細胞を用いる測定法です。

バセドウ病の診断および臨床経過 (再発時) の指標としてより有用であることが期待されています。

ブタ甲状腺細胞と検体 (現法は血清IgG画分、新法は血清) を反応させると細胞からcAMPが産生されます。
この細胞反応液中のcAMP濃度を定量し、同時に、コントロール血清の測定も同様に行い、 得られたcAMP産生量の比率からコントロール血清に対するTSAb値を算出します。

上條桂一, 他 : 医学と薬学71 (5) : 903-911, 2014. より引用

新法と現行法の比較

変更ポイント

ポイント

現新キットの比較 (使用細胞)

  • 現行法 現行法での使用細胞

    ダメージを受けた細胞が多い

    写真 写真
  • 新法 新法での使用細胞

    ダメージを受けた細胞が少ない
    細胞使用量は現行細胞の1/10→細胞の活性比が高い

    写真

現行法ではブタ甲状腺をコラゲナーゼ処理した細胞をそのまま使用するため、 甲状腺細胞クラスターの大きさが不均一でした。

これに対し、新法では甲状腺細胞を解凍後、ナイロンメッシュフィルターで濾過することで、 ダメージを受けた細胞を除去し、TSAbに反応効率の高い小さいサイズの細胞クラスターのみを使用します。
これによって感度が向上し、健常者とバセドウ病患者をより明確に分けることができます。

再現性

  • 現行法
    • 上條桂一, 他 : 医学と薬学71 (5) : 903-911, 2014.
      【同時再現性】C.V. (%) : 15.8~16.2 %
      【日差再現性】C.V. (%) : 7.7~10.1 %
    • 本多 厚, 他 : ホルモンと臨床49 (7) : 687-698, 2001.
      【同時再現性】C.V. (%) : 7.8~8.6 %
      【日差再現性】C.V. (%) : 13.2~13.5 %
      【ロット間】C.V. (%) : 13.3~14.6 %
  • 新法
    • 上條桂一, 他 : 医学と薬学71 (5) : 903-911, 2014.
      【同時再現性】C.V. (%) : 3.2~5.9 %
      【日差再現性】C.V. (%) : 3.7~5.6 %

新法では現行法に比べ、良好な再現性を認めました。

新法と現行法の比較 (相関図)

相関図

対象とした179例のうち、健常者におけるTSAb%の分布は現行法に比べ、新法でより小さく抑えられる傾向を認めました。

基準値設定について

カットオフ値が変わります。

現行法 180% → 新法 120%
度数分布

健常人110例と未治療バセドウ病患者146例で作製したROC曲線を示します。
カットオフ値を120%に設定したところ、TSAb%の感度は97.9%、特異度は100%でした。

新法と現行法の比較 (TSAb%算出方法)

TSAb%算出方法1

現行法では、正常コントロールのcAMP産生量 (N) を100%としたときの検体のcAMP産生量 (S) の割合を求めTSAb%としていましたが、 正常コントロールと患者検体では甲状腺細胞のロットにより挙動が異なる例も確認されていました。

そこで新法では正常コントロール (TSAb%:100%) と陽性コントロール (TSAb%:750%) の2本のコントロールを用いTSAb%を算出します。

TSAb%算出方法2 TSAb%算出方法3

内因性TSHの影響

  • 現行法
    グラフ 笠木寛治, 他 : ホルモンと臨床46 (10) : 913-924, 1998. より引用
  • 新法
    • hTSH添加試料
      表
    • TSH高値検体
      表
    ヤマサ醤油 (株) 社内資料より

新法では内因性TSHの影響を除去する目的で抗TSH抗体を添加しています。
現行法では内因性TSH濃度は20µIU/mLまで影響がないとする報告がありましたが、 新法では抗TSH抗体の添加により、内因性TSHが約300µIU/mLまで影響がないことを確認しています。

未治療バセドウ病と無痛性甲状腺炎におけるTSAb値 監修:上條甲状腺クリニック・上條甲状腺研究所 院長 上條 桂一先生

未治療バセドウ病および無痛性甲状腺炎患者血清中現行法TSAb値および新法TSAb値の陽性率の比較

グラフ 上條桂一, 他 : 医学と薬学71 (5) : 903-911, 2014. より引用

未治療バセドウ病と無痛性甲状腺炎の診断的中率 (正診率) が改善されました。

各種疾患におけるTSAb値

表 上條桂一 : 第56回日本甲状腺学会学術集会ランチョンセミナー資料より一部改変

健常人と未治療バセドウ病患者のTSAb値のROC解析から推定される新法TSAbのカットオフ値は120%でした。
そのときの感度・特異性は各々99.1%および100.0%となりました。

TSAbとTRAb、TSBAb

TSBAb (TSHレセプター抗体[阻害型]) の影響について

レボチロキシンNa投与7例、顕性甲状腺機能低下症1例計8例のTSBAb (現行法) 陽性例における TSHレセプター抗体 (第3世代) (M22-TRAb) および新法TSAbの測定結果は、 M22-TRAb値は全例強陽性を示しましたが、新法TSAb値は8例中弱陽性の2例を除きいずれも陰性を示しました。

TSBAb陽性患者 (現行法) におけるM22-TRAb値と新法TSAb値との比較

表 上條桂一, 他 : 医学と薬学71 (5) : 903-911, 2014. より一部改変

新法TSAb法とTSHレセプター抗体 (第3世代) (M22-TRAb) の比較

146例の未治療バセドウ病における新法TSAbおよびM22-TRAbの測定結果を、 それぞれのカットオフ値120%および2.0IU/Lにより陽性、陰性に分け表に示しました。

M22-TRAb値は146例中133例が陽性 (陽性率91.1%)、そして13例が陰性を示しました。
また、新法TSAb値は146例中143例が陽性 (陽性率97.9%) を示しのこる3例が陰性を示しました。

表 上條桂一, 他 : 医学と薬学71 (5) : 903-911, 2014. より一部改変

M22-TRAb値陰性未治療バセドウ病における新法TSAb値

表 上條桂一, 他 : 医学と薬学71 (5) : 903-911, 2014. より一部改変

M22-TRAb値陰性未治療バセドウ病の新法TSAb値の分布を示します。

新法TSAb値の平均値 (Mean) ±標準偏差 (SD) は257±137%、その範囲は127%から606%でした。
M22-TRAb値陰性未治療バセドウ病13例の新法TSAb値は全例陽性、 そして新法TSAb値陰性未治療バセドウ病3例のM22-TRAb値はいずれも陽性の結果から、 新法TSAbとM22-TRAbの両者の測定により未治療バセドウ病全例で TSHレセプター抗体が検出可能であることが示唆されました。

最後までご覧になっていただき、ありがとうございます。