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EBウイルス感染症における核酸検査 Part1 〜基礎編〜 

 
はじめに
 2012年5月のクローズアップでEBウイルスにおける抗体の分布状況と抗体検査の使い分けについて紹介しました。今回はさらにEBウイルスの感染確認や発症診断・経過観察などを調べることができる核酸検査について紹介します。
 弊社で実施しているEBウイルスの核酸検査には核酸増幅法であるPCR法とリアルタイムPCR法、また、ハイブリダイゼーション法であるサザンブロットハイブリダイゼーション法とin situ ハイブリダイゼーション法があります。基礎編としてこれらの測定方法と原理について説明します。
 
核酸増幅法
 ・PCR法(Polymerase Chain Reaction)
 PCR法は目的とする遺伝子配列(DNA)を増幅し検出する技術であり、二本鎖DNAを増幅します。実際には、サーマルサイクラーと呼ばれる温度をコントロールする装置を使用し、3段階の温度反応を30〜40サイクル繰り返します(図1)。
1段階目は変性(denature)と呼ばれる反応で、2本鎖であるDNAを加熱して1本鎖にします。
2段階目は1段階目で1本鎖にしたDNAの増幅したい遺伝子配列部分と相補的な1対のオリゴヌクレオチドプライマー(プライマー)を用いて二本鎖を形成させる反応でアニーリングと呼ばれます。
3段階目は、DNAポリメラーゼによりプライマーからDNA鎖を伸長させる反応です。前サイクルの反応で合成されたDNA鎖が新たな鋳型となるため、連鎖反応の名の通り、膨大な目的遺伝子が増幅されます。PCR増幅産物をアガロース電気泳動にて分画し、エチジウム・ブロマイド染色後、UV照射・写真撮影を行い、目視にて判定を行います。
 
 

図1.PCR法の原理
 
・リアルタイム PCR法

 DNA増幅の原理はPCR法と同じですが、サーマルサイクラーと蛍光検出器が組み合わされた装置を使用します。目的遺伝子に設定したプライマープローブを用いてDNAの増幅を行い、その蛍光強度をモニタリングすることで遺伝子の定量を行う検査方法です。リアルタイムPCRの代表的な方法には、SYBR Green Iなどのインターカレーターを用いる方法やTaqManプローブなどの蛍光標識プローブを用いる方法がありますが、今回は弊社でEBウイルス核酸定量法に用いているTaqManプローブ法について説明します。

 TaqManプローブとは、5’末端を蛍光物質で、3’末端をクエンチャー物質で修飾したオリゴヌクレオチドです(図2)。TaqManプローブは、アニーリング反応で鋳型DNAに特異的にハイブリダイズします。
プローブ上にクエンチャー物質が存在するため、励起光を照射しても蛍光の発生は抑制されています。その後の伸長反応ステップで、TaqDNA ポリメラーゼのもつ5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により、鋳型にハイブリダイズしたTaqManプローブが分解されると、蛍光色素がプローブから遊離し、クエンチャーによる抑制が解除されて蛍光を発します。核酸の定量は、PCR増幅産物すなわち蛍光強度が一定量に達した時のサイクル数とDNA初期量に直線性が得られることを利用して、段階希釈した既知量のDNA(検量線)から検体のDNA量を算出します(図3)。

 
 
 図2.TaqManプローブ
 
 

図3.リアルタム.PCR法の原理

 
 
 
 図4.PCR法の検査工程
 
 
ハイブリダイゼーション法
 ・サザンブロットハイブリダイゼーション法
 サザンブロットハイブリダイゼーション法は、特定の配列をもつDNA断片を同定する方法です。
検体から抽出したDNAを制限酵素により断片化し、得られた種々の長さのDNA断片をアガロース電気泳動で分画します。アルカリ処理にてゲル中で一本鎖にした後、ナイロンメンブレンに転写し、標識DNAプローブとハイブリダイズさせます。ウイルスを含む断片が存在すれば、そこで標識プローブのハイブリダイゼーションが起こります。余分なプローブを洗い流したのち、ハイブリダイズしたプローブの位置をX線フィルム上に化学発光法により検出することで感染細胞のクロナリティーを解析することができます。最も普及しているのは血液疾患における染色体の相互転座・クロナリティーの診断です。図5はEBウイルスクロナリティ解析における感染細胞のモノクローナル増殖の例です。
 
 

図5. EBウイルスクロナリティの検査工程と解析像

 in situ ハイブリダイゼーション法

 スライドグラス上で、細胞や染色体のDNA、あるいはrRNAと標識プローブをハイブリダイゼーションさせ顕微鏡下でウイルス感染細胞の確認や目的遺伝子(濃褐色に染色されているのがEBER)の局在性を証明する検査方法です(図6)。

 
 

 
図6.顕微鏡像
 

 以上、基礎編ではEBウイルスに用いる核酸検査の測定方法と原理について説明しました。次回のPart2では、弊社で実施しているEBウイルス核酸検査の特徴や意義について紹介します。

検査Q&
 

EBウイルスはDNAウイルスですが、RNAウイルスの場合、PCRはどのように検査するのでしょうか?

  
 

 RNAウイルスを対象としたPCR法にRT−PCR法(Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction)があります。RNAは一本鎖なので、そのままではPCRを行えません。そのため、逆転写酵素を用いてRNAを鋳型としてDNAへの逆転写反応を行い、cDNA (complementary DNA)を合成します。このcDNAを鋳型にPCRを行う検査法です。

     
   
   

クラミジアトラコマチスと淋菌のクローズアップ(2012年7月10月)で、核酸増幅検査にTMA法が用いられていましたが、その測定方法について教えて下さい。

 

淋菌およびクラミジアトラコマチスrRNA同時同定の測定に用いられているTMA法(Transcription Mediated Amplification)について説明します。この検査方法は、2種類のプライマーとT7RNAポリメラーゼと逆転写酵素を使用して等温でRNAを増幅する事が可能な検査方法であり、まず、T7プライマーが標的RNAへハイブリダイゼーションし、逆転写酵素によりcDNAを合成します。次に逆転写酵素のRNAse H活性により標的RNAが分解され、続いてプライマーがcDNAへハイブリダイゼーションし、逆転写酵素によりプロモーター配列を持つ鋳型二本鎖DNAが合成されます。この鋳型二本鎖DNAをもとにRNAポリメラーゼの転写反応によりRNAが合成されます。このRNAは、上記と同様な行程により鋳型二本鎖DNAとなり、RNAが増幅されます。
     
   

SRLでは核酸増幅法のコンタミネーション対策をどのようにしていますか?

 

核酸増幅法は高感度な反応であるため、コンタミネーションには細心の注意を払う必要があります。他検体からの核酸あるいはPCR増幅産物の混入汚染を検出できるように、必ず対照サンプルを同時に測定しています。また、核酸抽出・核酸増幅・電気泳動をそれぞれ区切られた差圧管理下の部屋で行っています。さらに汚染DNAの不活化のためにUV照射や次亜塩素酸を適宜使用しています。
核酸増幅においてヘパリン入り容器は不適と言われますが何故ですか?
  抗凝固剤である”ヘパリン”が核酸増幅反応を阻害するためです。従いまして、ヘパリン入りの採血管や容器は使用しないで下さい。弊社ではEDTA-2Na入りの採血管を推奨しています。
     
     
 【用語集】  
 ・ サーマルサイクラー
    PCR反応に用いられ、設定したプログラム通りに反応液の温度を上下させる装置
     
 ・ プライマー
     核酸増幅において検出したいDNAと相補的な配列をもつ20塩基程度の合成オリゴヌクレオチド
     
  ・ DNAポリメラーゼ
     DNAを合成する酵素
     
  ・ 逆転写酵素
     RNAを鋳型としてDNAの合成反応を行う酵素
     
  ・ SYBR Green T 
    二本鎖DNAに結合する緑の蛍光色素
     
  ・ インターカレーター
    DNAの二本鎖間に入り込む性質を持つ化学物質
     
  ・ プローブ
    化学発光物質や蛍光色素を結合させた一本鎖DNA断片であり、目的の塩基配列を持った核酸を検出するために用いられる
     
  ・ クエンチャー物質
    消光物質(励起エネルギー吸収物質)のこと
     
  ・ エキソヌクレアーゼ活性
    DNA配列の外側から、削るようにDNAを分解する活性
     
  ・ RNAポリメラーゼ
    RNAを合成する酵素
     
  ・ ハイブリダイゼーション
    相補性のある二本の核酸が結合して2本鎖になること。DNA同士、RNA同士、DNAとRNAの組み合わせでも起こる。
     
  ・ RNAse H活性
    RNAとDNAの組み合わせの二本鎖においてRNA部分のみを切断、分解する活性
     
  ・ プロモーター配列
    RNAポリメラーゼが転写開始の際に認識する塩基配列
     
  ・ 制限酵素
    DNAの特定の塩基配列を認識し、切断する働きをもつ酵素
 
 
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