ジュール熱とシリカで新たな時代を切り開くことに!!

こんにちは、Club SRL 武内優子です。

サラサラで細い髪の毛の人を見ていたら、何故かキャピラリー (毛細管) 電気泳動法を連想しました。

そういえば、真っ直ぐな円筒状の毛細管は、中空円筒だとわかっていましたが、 対流の発生を防ぐことが、発生するジュール熱の放熱も容易なことから、 物質の分離に用いることができることが、キャピラリー電気泳動法だと理解しています。
実は私は理系女子です。

中空円筒はシリカ製で、100μm以下の円筒内で行う電気泳動法で、イオン性化合物の分離に有用な分離分析法です。
シリカというのは超微細シリカ (SiO2) 粒子です。これは光ファイバーの芯 (石英ガラス) でお馴染みだと思います。

シリカ製キャピラリーを用いる場合には非常に高い電圧をかけても流れる電流は小さく、 電気泳動を行う場合、大問題となっていたジュール熱の発生を制御することも可能です。
そして短い分析時間で処理が可能です。

このシリカの質の向上がキャピラリー電気泳動法の進展に貢献していると解りました。

さて、この新しいキャピラリー電気泳動法をSRLは導入します。
まずは蛋白分画の測定から、病型分類やM蛋白のスクリーニングとして取り組みます。

今までは、5つの蛋白分画群ですが、今回は6つの蛋白分画群からの紹介です。

キャピラリー電気泳動法

キャピラリー電気泳動法 (capillary electrophoresis, CE) の健常者、病態異常の分画パターンは、 従来のセルロースアセテート膜電気泳動法 (cellulose acetate membrane electrophoresis, CAEP) でも基本的に変わっていません。 キャピラリー法の特性もふまえながら、分画を構成するおもな個別成分を解説します。

正常分画パターンと主な蛋白分画の移動度

正常分画パターン

分画を構成するおもな個別成分

  • トランスサイレチン (TTR: プレアルブミン)

    代表的な栄養マーカーであり、炎症、腫瘍などのストレスにより急激に低下する陰性急性相反応物質でもある。 ピーク比率は低く利用に限りがあるが、上昇・減少消失変化を個別ケースで観察し、 回復・悪化のフォロー、健康状態の把握に利用しうる。

  • アルブミン

    酸塩基平衡、膠質浸透圧の維持に働き、ホルモン、ビリルビンなどと結合する担送蛋白である。 陰性急性相反応物質である。健康、栄養状態の把握、回復・悪化のフォローに用いられる。 高度な減少は重篤な病態を示唆する。幅広いピーク、二峰性にスプリットするピークは、 間接ビリルビンの増加、薬物結合、遺伝子変異 (一塩基置換) などにみられる。

  • α1-酸性糖蛋白 (α1-AG: AG)

    ストレス負荷で3~5日後に増加する陽性急性相反応物質である。 CEではα1分画の構成成分としてとらえられる。 塩基性薬物と結合能が高く、高度に増加した場合には薬物投与量に注意を要する。

  • α1-アンチトリプシン (α1-AT: AT)

    陽性急性相反応物質の一つである。 おもに白血球由来のエラスターゼと結合して消化分解能を抑制し、 下部肺組織の消化破壊を防ぐ機能を有する。先天性欠損症ではα1分画の顕著な低下を示す。

  • ハプトグロビン (Hp)

    ヘモグロビン (Hb) の担送蛋白で、α2分画の30%を占め、陽性急性相反応物質でもある。 血管内溶血、体外溶血 (血液透析) で消費され高度に低下する。肝機能の高度の低下も反映する。 ただし、TTRの方が鋭敏である。Hpは、陽極から陰極側に向かって二峰性の明瞭ピークとして Ⅰ-Ⅰ、Ⅱ-Ⅰ、Ⅱ-Ⅱ型の遺伝子型としてとらえられる。

  • α2-マクログロブリン (α2-M: AM)

    非特異的プロテアーゼインヒビターである。 ネフローゼ症候群では、高分子蛋白であるα2-Mは腎臓から体外に漏出しにくく、 α2分画の相対的増加に寄与する。なお、CEでは脂質関連成分はアルブミン分画に移動し、 “増加”に寄与している。これを上回るアルブミンの著減が起きている。

  • トランスフェリン (Tf)

    β1分画に移動する、全身組織に鉄を輸送する担送蛋白で、陰性急性相反応物質でもある。 鉄欠乏性貧血、妊娠では増加し、体外への鉄のロスを抑える (不飽和鉄結合能〔UIBC〕の増加に相当)。 β1分画の単独増加があれば判断しやすい。

  • 補体第3因子 (C3)

    陰極寄りのβ2分画に移動する。陽性急性相反応物質であり、 膠原病、糖尿病、肥満など比較的慢性に経過する病態で増加する。 全身性エリテマトーデス (SLE)、膜性増殖性糸球体腎炎などでは、血清免疫複合体の形成の消費により低下する。 新鮮血清4℃保存で2日目ぐらいから、56℃非働化ではただちにC3cに変化し、二峰性のピークを形成する。

  • IgA

    β分画とγ分画の間に移動する。局所粘膜に存在し、外来異物抗原の処理にかかわる。 血清での増加は粘膜由来のものも少なくない。 肝硬変症では、逆流による粘膜由来の分泌型IgAの増加によりβ-γ bridgingを形成する。

  • IgG

    γ分画の主要成分、多クローン性に幅広いピークを示す。

  • IgM

    γ分画に移動する。量的に少なく、IgGのピークに隠れとらえられない。

引用 伊藤 喜久: キャピラリー電気泳動法による血清蛋白分画とその応用 Medical Technology Vol.39 278~284 2011.

蛋白プロフィールによる病型パターン、個別ピーク変化*1

表 引用 伊藤 喜久: キャピラリー電気泳動法による血清蛋白分画とその応用 Medical Technology Vol.39 278~284 2011.

武内のひとこと

造影剤は非イオン性モノマー (イオパミロン (イオパミドール)、オムニパーク (イオヘキソール)、 オプチレイ (イオベルソール)、イオメロン (イオメプロール)、プロスコープ (イオプロミド)、イマギニール (イオキシラン) など) や、 イオン性ダイマー (ヘキサブリックス)、非イオン性ダイマーで個別成分ごとに同一移動度に同一波形パターンを示します。

この様に造影剤はM蛋白様ピークを一般的に示します。個別成分ごとに移動度、波形が一定で、特定は容易との見解が多いそうです。

キャピラリー電気泳動法での蛋白分画測定で造影剤は同一移動度に同一波形パターンを示すことは、 理系女子の私として、キャピラリー電気泳動法は確かに精密な測定ができることを証明していますので、面白いと思っています。

キャピラリー電気泳動法 (capillary electrophoresis, CE) の波形集

  • 二峰性アルブミン
  • 正常パターン
  • 炎症パターン
  • 正常パターン
  • ネフローゼ症候群
  • 正常パターン
  • C4
  • 正常パターン
  • CRP
  • 正常パターン
  • フィブリノゲン
  • 正常パターン
  • 高脂血症 (脂質異常症)
  • 正常パターン
  • リポ蛋白あるいはビリルビン
  • 正常パターン
  • 溶血
  • 正常パターン
  • ハプトグロビンあるいは若干の溶血
  • 正常パターン
  • ハプトグロビン表現型: Ⅰ-Ⅰ
  • 正常パターン
  • ハプトグロビン表現型: Ⅱ-Ⅱ
  • 正常パターン
提供: フィンガルリンク株式会社

今回はキャピラリー電気泳動法のガイダンスでした。

キャピラリー電気泳動法を導入することで蛋白分画のスクリーニング検査として、 多発性骨髄腫におけるM蛋白の有無や本態性M蛋白血症 (monoclonal gammopathy of undetermined significance: MGUS) における有用性は間違いないですが、導入に際しては 分画パターンやM蛋白様ピークなどCAEP法との相違を十分に考慮し、 臨床の現場において混乱を招かぬように配慮しなければなりません。

次回は大阪大学医学部附属病院の正司浩規先生の考察を加えて報告をします。

受託要綱

(2014年11月25日より実施)

受託要綱

造影剤などの薬剤を投与された場合には検査値に影響がみられる可能性があります。